百合に挟まりたいボーイ 百合に挟まる男すべて殺すガール

 長文書きたいからはてな復帰してブログ書きますと言ってからだらだらと何も書かずに早半年(ちなみにその間ずっとスマホでマイクラやってた(る)。楽しいね、マイクラ!)。ここ数日あまり見なくなっていたTwitterで久しぶりにハッスルしてツイート多投しECHOESの「ZOO」の「しゃべりすぎた翌朝 落ち込むことの方が多い」という歌詞を身をもって体験しているところなので、折角だからブログにその辺をちゃんと書き記しておこうかなと。

 というわけで今巷で話題の「百合に挟まろうとする男」(百合挟男)についてのお話です。

 じゃかじゃん!

Q.今話題の「百合に挟まろうとする男」とは?

 えびかつ丼いったー! ではなくて。

A.「百合挟男」とは「百合な関係にある二人の女性に介入する(したがる)男」を指す言葉である。

 まずは定義の話と言うことで、乱暴に言ってしまうとこんな感じですね。一見すると凄く分りやすい、様に見えます。言葉のアウトラインとしては何も間違っては無いのだから当然といえば当然ですけれども、実際の所この言葉の使われ方を見てみるとそう単純な話でも無かったりするんですよねえ。

 どういうことかというとですね、とりあえずTwitterを「百合に挟」(「百合に挟まる男」でも可)で検索してみてください。上記の定義に従って「百合挟男」について語ってる多くの人達が出てくると思います。ただそのツイートたちを見ていくとあることに気がつく(人もいる)でしょう。

「こいつら同じようなこと語ってる様に見せかけて対象がバラバラじゃねーか」*1

 例えば百合作品における百合関係を邪魔する存在としての男性キャラの話*2をしている人もいます。例えばニコ動やpixivのコメントを持ち出して百合コミュニティ内の男性オタクの態度の話として語っている人もいます。例えば現実のビアンカップルにちょっかいかける男根主義の迷惑男の話とリンクさせて断罪する人もいます。

  なんというか「百合挟男」が上記の定義を基にした概念的存在と化しているんじゃないかという感じるくらい人によって指し示す対象が違う状況なんですよね。*3

「百合挟男」が顕在化させる百合ジャンル(百合オタコミュニティ)の問題

  さて一方でこんな感じで私も昔からちょくちょく刺していたのですけれども、百合ジャンル(百合オタコミュニティ)では昔から「男へのdis」をネタとして消費するところがあります。*4百合オタとしての帰属意識の確認のため、あるいは単純に百合オタ内で受けるネタとしての男disがカジュアルに行われているにも関わらずあまり問題視されない雰囲気があるんですね。*5

 それが「百合挟男」という概念的な存在と合わさるとどうなるか。

 簡単ですね、はい。実際Twitterを「百合 男」で検索してみるとすぐ分かりますが、「百合挟男」への敵意憎悪殺意といった攻撃性が垂れ流されるような状況、そういった攻撃性がコンテンツとして恒常的に消費されるような状況になっています。今回「百合挟男」の話題がTwitterで盛り上がったのも、今まで百合オタコミュニティ内部でなあなあに半ば許容されてきたこういう状況・異常性が外部の目にとまり疑問視危険視されたから*6というところが大きいのでしょう(少なくとも私のTLではそうだった)。

 勿論百合オタとしては異議がある人もいるのは当然で、実際今回の件で百合の定義と上記の「百合挟男」の定義を持ち出してそれを根拠に百合ジャンルにおける男の悪徳性を説き「百合挟男」disの正当性を主張する人は割りと見かけます。簡単に言うと「百合挟男」をジャンルやコミュニティへの侵略者として位置づけることにより「百合挟男」dis自体をそれに対する防衛行為として正当化する理論ですね。*7

 こういう理論が出てくる背景には元々百合ジャンルの足腰が弱く商業的にも安定しだしたのがここ数年の話でヘテロやBLと比べるとまだまだ市場規模的にも小さなこと、元々百合オタが百合と銘打たれた作品以外にも百合的な関係を見いだし百合として消費してきたこと(当然非百合的な方向に物語が進むことも多い)、エロ系で顕著な傾向ですが百合(レズ)的な関係がヘテロ恋愛(セックス)の前座にされがちな事など、百合オタを取り巻く環境的にヘテロ・男に対する被害者意識や対立・敵対意識が生まれやすい状況がずっと続いていたことがあります。さらに言うと百合オタコミュニティは割りと排他的というか気にくわないものを排除したがる傾向があるので、*8その辺も大きく影響している所はあるでしょう。

 だから百合オタが男dis・批判をする理由というのはある程度理解出来る範疇の物なんですが、問題はなぜそれがネタ的にカジュアル消費されるのかということが当の百合オタも説明出来てないところにあります。それどころか「百合挟男」に至っては「死」「滅」「殺」あたりのかなり強い漢字を含む単語がナチュラルに使われる状態が恒常化しているにも関わらず、そのことに疑問を持ってる百合オタもあまりいない。逆に「百合挟男」(男)への敵意・憎悪・殺意といった攻撃性を発露することが自分が百合オタであることを簡単にアピール出来る方法になっているんじゃないかと思えてくるような状況です。これは(あまりこういう言い方好きではないんですが)所謂「ヘイト」が恒常的に消費されているコミュニティと言われても仕方が無い状況と言えるんじゃないでしょうか。

 百合ジャンルや百合オタコミュニティにおいて百合オタがマジョリティになっているから、そしてそのマジョリティの中で攻撃的な男disは問題ないという空気が漠然と支配的になっているからなあなあになってるだけで、本来こういう状況というのは対外的に百合ジャンルが危険なコミュニティと受け取られかねない危険性を孕むものですし、内部的に見てもその攻撃性が暴走する危険性を孕むものと言って良いでしょう。

 直接的な男disではないけれども、実際に百合オタ界隈で私が観測した範囲内だけでも

  • アニメ『ゆるゆり』第1期が放映された頃に新しく百合オタになった人間の「ライトなものが百合でガチなものはレズ(だからアレは百合じゃない)」みたいな発言に自分に力を与えてくれた百合が簒奪されてしまうという危機感を持ち、毎日のように『ゆるゆり』やゆるゆりファンに対して攻撃的なツイートをするTwitterアカウントがあった。
  • 響け! ユーフォニアム』のアニメが放映された頃、男が絡んでくる作品であるのに百合オタ界隈では百合作品として見てる人が多いことに腹を立てた人間が「響け! ユーフォニアムは百合じゃない」という言葉を旗印にTwitterアカウントを作って百合作品として扱う事への批判攻撃を繰り返していた。
  • 2ちゃんねる(正確にはbbspink)の「レズ・百合萌え板」がこんな名前になったのも百合オタが少なくビアン系スレの方が活発的だったことに「ビアンに板が乗っ取られてしまう」という危機感*9を抱いた人間が居たことが発端だったり、ビアン系スレ(ナマモノ系を除く現実系スレも含む)が軒並み荒らされて潰されたりもした。*10

と言った百合オタが持つ攻撃性が暴走した事例があったので男への攻撃性だけ暴走しないとはとてもじゃないけれども信じられないのですよね。幸いにして今回の件も百合オタコミュニティとその周辺のみに話題が留まっているのでこれがコミュニティの壁を飛び越えて広がっていくような事態が起こる前にたとえ男が対象であっても安易な攻撃性の発露は許されないという風に百合オタコミュニティの空気を変える必要があるんじゃないでしょうか。

 最初の方で述べた通り、「百合挟男」と言う言葉が指し示す対象は使う人によって違っています。だから忘れられがちなのかも知れませんが、その中に実在する生身の人間も含まれているんですよね。生身の人間がネタであれ攻撃性を常に向けられ続けているとどういうものが積み重なっていくか、少なくともその辺をきちんと考えていく必要はあると思います。

「百合挟男」だって生きているんだ、友達ではないけれど

 というのものですね、今回の件とは別ですがほぼ同時期に百合ジャンル・百合オタによる自ジャンル否定を受け続けている(と認識している)人達による百合への怨嗟の声を二件ほど見ちゃったというのがあるんですよ。

 一つ目は『艦隊これくしょん -艦これ-』の大井が今年の梅雨時期の季節衣装で薬指に指輪を付けていたことで大井提督LOVE勢派の一部が勝ち誇ったように百合オタへの嘲笑をしていた件。これは某botなどの影響もあって艦これの大井=ガチ百合という認識が強すぎて提督LOVE勢としての側面*11がずっとスポイルされていた状態の中で新規グラで指輪装着という爆弾*12が落とされたことによって百合オタへの感情が爆発したという話。*13

 二つ目は百合オタ界隈でも百合として評判が高かった某アニメのスピンオフ漫画をその評判故に避けていた人が最近読んで、百合として評価されていた主人公二人の関係性は友愛であってこれを百合というエロスとして捉えた百合オタは頭がおかしいというような批判をしていた件。*14元々百合嫌いな人らしく「百合として見る=エロ目線で見ている」という雑百合定義を披露しているので本来ならあまり真剣に取り扱うものでもないんですが、とりあえず本人的には百合が嫌いだから避けているけれども百合でないものまで百合と言って自分の選択肢を奪っているみたいな主張の話。

 百合オタにしてみれば知らんがなの一言で済ませても良いような話でしょうけど(特に二つ目のは)、注意したいのが二つの話に共通してあるのが百合オタ・百合ジャンルによって自分たちが抑圧されているという認識とそれに対する恨みを募らせているという所。これは半ば逆恨みな所はありますが、「百合挟男」に関して百合オタが問答無用のサンドバッグ状態で酷い言葉を浴びせ続けているのは紛れもない事実な訳で、実在する生身の「百合挟男」の心にどんなマグマが溜まっているのか、想像するだけで恐ろしい。

 まあ実在する生身の「百合挟男」がどれくらいいるのかっていう話ですが、例え存在するのが一人二人だったとしても、一端マグマが噴出してしまえばネット上のコミュニティぐらいは簡単にかき回してダメにすることくらいは可能ですし、そうでなくともわざわざ百合ジャンル外のことに口を出して百合ジャンルにトラブルを持ち込む必要ってないはずなんですよね。

 さらに今回の件では「百合挟男」というのは百合ジャンルの浸食を試みる許されざる者ではなく、百合ジャンル外での百合消費の一嗜好形態に過ぎず、それを百合オタが必死になって攻撃して排除しようとするのはどうなのという話も出てました。もっと突っ込んでいくと百合オタが他ジャンルの作品のキャラを百合的に消費することとの整合性とか場的にマジョリティである側がマイノリティ側の嗜好を拒否排除しようとする形になっているみたいな話にもなっていきますしね。*15

 そしてそんな感じで争いの原因になりそうなネタを作ったり、理論的に突っ込まれそうな隙を作ったり、そういう潜在的なリスクを作る割りには「百合挟男」への攻撃をするメリットって見当たらないんですよ。2003年の百合元年以前ならともかく、百合漫画専門誌が毎月刊行され一般漫画誌・web漫画サイトにおいても百合作品の連載・掲載が恒常的に有り、その結果毎月百合漫画単行本が複数刊行される状況でそこからアニメ化される作品も少しずつ出て来ている現在、「百合挟男」は徹底的に攻撃して排除しなければならないほどの百合ジャンルの脅威になっているのかといったらまったくなってないですからね。だから考えつくメリットと言えばせいぜい百合オタが嫌な思いをしないとか気が晴れるとかくらい? それにしたってカジュアルに敵意や憎悪を消費してまでやるものでは無いと思うのですが……

 「百合挟男」だって私たちと同じ生身の人間で同じように感情を持っている存在だって事を忘れていたずらに敵意や憎悪をぶつけた先に何があるのか。その可能性の中に深刻なものがあることを理解して改めて百合オタは「百合挟男」への態度を真剣に考える必要があると思います。*16

おしまいに

 「百合挟男」が話題になってから約2週間くらい、その間にちまちま書いたものなんで割りと展開が滅茶苦茶だったり、割りと締まらない文章になってたり、文中で言及しているTwitterの検索結果も多分変わってたりとアレな記事だなあと自分でも思います。長文書くのムズカシイネ。

*1:さらに言うと、「百合に挟まる男」「百合に挟まろうとする男」「百合に挟まりたがる男」「百合に挟まりたい男」「百合に挟まれたい男」という感じで表記も割りとバラバラだったり。

*2:ただし具体的な作品名やキャラ名はあまり出ない。

*3:実際Twitterでは概念的存在として捉えている人もそこそこ見かけます。

*4:ちなみにこのツイート自体は男disネタに何か一言もの申したくなったけど百合オタ界隈で悪目立ちもするのもアレなので最後にオカダ・カズチカ的なムーブで逃げたものだと思われます。

*5:元々「百合ジャンル」自体が「男からの避難所・シェルター」「抑圧からの解放者」として機能している側面があり、その関係上男に対して厳しい態度を取る人達が一定数居るところでもありますが。

*6:ちなみに切っ掛けはよく分かりません。

*7:中には女性同士の仲に男性が割り込んでセックスするというのは暴力を用いてやる行為であり実際のビアンに対する加害に繋がるからネタではなく立派なヘイトとして取り扱って潰すべき(この辺うろ覚え)、みたいなことを言う人もいました。

*8:例えば背徳性や禁忌性、悲劇性の強調といった同性愛を異性愛と比べて悪い意味で特別なものとする要素は正しくないもの・古いものとして批判され程度の差は関係なくほぼメインストリームから排除されつつある状態だったりします。

*9:念のため書いておくと、危機感はともかく掲示板のルール的には専門板がある話題は専門板で行うことが正しいので本来ビアン系スレは同性愛板に立ててやるべきものではあった。ただ同性愛板がほぼゲイ系スレで埋め尽くされてビアンが入りにくい雰囲気が合ったというのも申し添えておきたい。

*10:あと些細なことではあるけれども、『コミック百合姫』スレが『コミック百合姫S』が創刊されたときに「男性向け百合」の話題が目に入るのも嫌だと言うことでスレ内の議論がないまま勝手に分離されたということも。

*11:きちんとゲーム内ボイスでも提示されている側面です。

*12:「艦これ」はゲームシステム的に提督から艦娘に指輪を贈れる。つまり……

*13:大井提督LOVE勢創作してる人に百合オタがわざわざ批判中傷しにいったという話も流れてきましたが未確認なので眉唾程度で。

*14:本当に個人の話なのであえてぼかしてあります。

*15:聡い百合オタは今回の件で「百合に挟まるという欲求自体は否定しない」みたいなエクスキューズを付けるようになっていましたが。

*16:勿論これは百合ジャンルや百合オタに敵意や憎悪をぶつけたがる人達にも言えることです。