私の百合歴書

 この前の百合挟男騒動の際に「百合史(百合ジャンル史)というものがあまり語られていない」という指摘をして自らの体験を基に百合史を語ってる方が居ました。言われてみれば確かにその通りですし、触発されてその方が語られていないことを中心に自分もいくつかの百合史ツイートを投下してみました。

 今回はそのツイート群を基にもう少し自分に寄せて自分の百合史的な話を書いてみたいと思います。

原初の百合の記憶

 私が何故百合というジャンルを好きになったのか。

 正直な話、私自身何が切っ掛けなのかとんと覚えておりません。実際には何かしらの作品や出来事の影響があったんでしょうが、私の記憶には全くないまま気付いたときには女性同士の関係性というものに惹かれている自分があったのです。

 今思い出せる最古の百合的な記憶は幼い頃戦隊物のピンクと女性が仲良くしたりどちらかが敵に捕まったらもう一方が助けに行くというような空想をしていたこと。

 Twitterで何回か言及した覚えがあるこれ、今よく考えてみると戦隊物のピンクそのものではなく戦隊物のピンクのような強さを持った女性という脳内オリジナルキャラだった可能性が高いです。具体的な戦隊の名前もキャラ名もどうしても思い出せないですし。*1

百合の揺籃期

 おそらく子供時代に色んな作品で同じような空想をしていたと思われますが、具体的なキャラの名前を思い出せるのは叶和貴子(正確に書くならば『宇宙刑事ギャバン』のミミーなのだけれども何故かこう書きたくなる)と『天空戦記シュラト』の那羅王レンゲの二人。

 前者はともかくレンゲに関してはアニメでの扱いに納得出来ずに彼女を幸せにする為に脳内オリジナル女性キャラと絡ませて仲良くさせていた記憶がうっすらあるんですよね……*2

 今思うにこれが間違いなく私の百合観の一つの原点ではあるんですけど、当時子供で当然『セーラー服 百合族*3の存在を知ることもなくオタクですらなかった私は百合的なものを好きでいる自分というものを認識することすらありませんでした。

百合の夜明け前

 とはいえ私が生まれ育った地域は割りとアニメの放送が多いところでしたし、それに当時はまだ普通にゴールデンタイムにアニメが放映されていた時代でしたから、家にいる方が好きな性格もあって子供時代はかなりの数のアニメを見て過ごしていた記憶はあるんですよ。この辺はオタクになる下地だったと言えると思うんですけど、そういう状況でしかも『美少女戦士セーラームーン』ほぼ直撃世代にもかかわらずセラムンアニメを見た記憶が全くないんですよねえ。*4 今思うと物凄くもったいないことしてるなあと。子供時代ほとんど男性向け作品ばかり消費していた中でアニメに関しては『きんぎょ注意報!』『姫ちゃんのリボン』『赤ずきんチャチャ』『ナースエンジェルりりかSOS』辺りはしっかり見てた記憶があるからなおさらねえ……

 そういう状況でしたから私が百合というジャンルを認識して自分の好きなものを自覚する様になるのはもう少し後、子供を止めて一人暮らしを始めるようになってからになります。

 ちなみにその間にアニメ『Xメン』から小学館プロダクション(現 小学館集英社プロダクション)の邦訳本を経て原書に手を出すようになる程アメコミにずっぽりはまってオタクとしての第一歩を歩み出していたり……あ、同時期にファンタジー・伝奇系の面白い小説を書く作家ということで追いかけようとしていた栗本薫の作品だからとただの時代小説と思って予備知識なしで『元禄無頼』を読んで打ちのめされた挙句ちゃんと理解した上で『終わりのないラブソング』を購入した事もあったわ……つまり私は百合ジャンルを認識する前に所謂BLジャンルを認識して作品まで購入していたということに……

百合の目覚め

 そんなこんなで始めた一人暮らし、基本オタク活動資金はアメコミに投入していたのでオタク活動といっても暇あればTVアニメを見るくらいという実家に居たときとあまり変わらない感じでした。が。

 そんな中で出会ったのがTVアニメ版『バトルアスリーテス 大運動会』。頂点を目指し切磋琢磨競い合う女性アスリート達の姿が描かれたスポ根スペースオペラのこの作品で私は女性が女性に恋愛的な好意を向けるということを知り、それに加えて女性間の友情や嫉妬の感情もまた恋愛的なものと同じくらい心を揺さぶるものだということを知りました。言うなればこの作品でようやく私は「百合」に目覚めることが出来た、「百合的なもの」が好きだと自覚することが出来たのです。

百合(と)ネットワーク

 最も私が「百合」という言葉を知るのはもう少しあとだったりするんですけどね。

 「大運動会」放映後数年の間はリアルで「女性同士の恋愛・関係性」の情報にリーチ出来る媒体って一般的になかったですし、自分の周りにもそう言う情報を持ってる人はいませんでしたから、自分の好きなものが何かというのは自覚出来たけれどもそこからさらに広げて深めていくことが出来なかったんです。当然「百合」という言葉自体知る機会もありませんでした。

 そこからどうやって「百合」という言葉に辿り着いて百合ジャンルへと身を投じることになったのか。

 切っ掛けはインターネットでした。

 丁度「大運動会」が放映されたすぐあとくらいに初めてのパソコンを買ってネットに接続は接続はしてたんです。ただ基本的にアメコミの情報入手やアメコミファン同士の交流に使っていて、 「百合」関係の情報にはリーチ出来ていなかった。

 アメコミの場合当時ネット上にポータル的な場所があり、*5 そこから派生する形で色んな人が掲示板や自前のアメコミサイトを作っていましたから*6、ネット上でアメコミ情報やアメコミファンコミュニティにかなりリーチしやすい状況がありました。一方で百合の場合はネット上のポータル的なものすらなかった。*7

 そうした状況が変わるのが2000年のこと。

RISE OF NAMAMONO

 2000年。それはとある出来事によって2ちゃんねる知名度が飛躍的に上がった年です。例に漏れず私もその年に2ちゃんねるに初めて足を踏み入れました。辿り着いた先は当時絶頂期にあったこんにちわ計画の朝ガールの掲示板。*8 時期的には先日あった国家的大イベントに参加して見事討ち死にした人の卒業の余韻がまだそこかしこにあった頃でしょうか。

 とあるTV番組のオーディション企画から立ち上がった朝ガールはこの頃までその番組内で継続して彼女たちの活動する姿が放映されていたこともあり、彼女たちの性格やメンバー間の関係性といったものが他のグループに比べるとより広く知られていた所があり(それこそネガティブな要素まで含めて)、受け取り方もどちらかというと二次元キャラに近い感じがありました。その影響もあってか、私が朝ガール板に辿り着いたときには既に朝ガールメンバーのキャラ的消費、つまるところ朝ガールのナマモノSS投稿が普通に行われていた状態があったんです。

 中にはヘテロ夢小説的なものもありましたが、女性だけのグループのメンバー間の話がメインなのもあり、所謂「ナマモノ百合」的なものの方が目に付くような状態だった記憶があります。時期的にマリみての勢いが増す中で教育係というスール的な制度での関係性があった前述の討ち死にした人と金髪のちょっと生意気入ってる感じに見える後輩のカップリングに卒業による別れという大イベントが発生した直後だったというのも大きかったのかな。さらに後を引き継ぐような形で当時加入したばかりの新メンバーの中にボーイッシュとガーリッシュのコンビという百合的に分りやすいカップリングが生まれつつあったのも大きかったでしょうか。勿論朝ガールナマモノ百合の代表的なカップリングであるこの2つの他にも本当に様々なカプの話がありました(SSに昇華する前のカプ雑談みたいなものも含めて)。2ちゃんねるという巨大掲示板の中でもトップクラスの問題児で荒れやすくスレの数も多く消費スピードも格段に速かった朝ガール板の中で「ナマモノ百合」的なものはささやかで密やかでありましたが確実に根付いていたと言えると思います。

 百合的なものを好きな自覚は生まれたものの供給不足でその気持ちを眠らせていた私がそういうのに触れて嵌らないわけがなかった。特にone thousand four hundred forty-fourの文字で表わされる前述のボーイッシュ&ガーリッシュカプなんか無茶苦茶どハマりしました。*9 SS投稿は結局しませんでしたが、カプ雑談的なものは割りと参加した気がしますし、そうやってこの界隈をうろちょろしている内におそらく私は「百合」という言葉を知り、「マリみて」の存在を知ったのだと思います。*10

  そんな感じで朝ガールナマモノ百合と「マリみて」の両輪で百合オタへの道に突き進み2003年の百合元年を迎えるわけですが……*11

そして百合元年へ…

 『コミック百合姫』の前身である『百合姉妹』が創刊されたり、百合漫画アンソロジーがいくつか発売されたり、「マリみて」のアニメ化が発表されたり、割りと盛りだくさんだった気がする2003年を経て漫画やアニメ・ゲーム方面の百合へと比重が移っていったくらいしか語ることないからなあ……あとなんかこの辺からの記憶が結構薄いし、とりあえず今回はここまで、あと適当に思い出せたら続きでも書きます。

 一応最後に念のため書いておきますけど、あくまでも自分の記憶を元に書いているので間違ってる所とかあると思いますので書いてあることを鵜呑みにしないで下さいね。一応資料と照らし合わせて修正はしてありますが仕切れてない所もあると思うので。

 あと個人の記憶頼りの百合史も数が集まればそれなりに見えてくる物もあると思うので、是非みんな自分の百合史を振り返って軽率にネットに書き残しておきましょう!

*1:さらに言うとこの後私が百合的な空想妄想するときずっと相棒にしているオリジナル女性キャラがほぼそのマイ戦隊物ピンクだったりするんですが、流石にそのキャラの詳細を話すのは恥ずかしいのでまあそのうん……

*2:ミミーに関してもWikipediaの記述を見るとそういう方向性でやっていてもおかしくない感じはある。

*3:「百合」を女性同士の関係性を現す言葉として世の中に知らしめた作品。日活ロマンポルノ。ちなみにこれを撮った監督は実写版映画『デビルマン』と同じ人で、シリーズ続編の監督には平成ガメラシリーズを撮った監督もいたりする。

*4:ただ何故か『コードネームはセーラーV』の単行本は購入している。

*5:ちなみにアニメ化もされた『がっこうぐらし!』の原作者である海法紀光氏が当時開設していたアメコミ系サイトの掲示板のこと。

*6:私も作りましたよええ……

*7:少なくともただの一般人である私が認識出来る程度の規模のものは。

*8:なぜそこに辿り着いたのか、理由は覚えていません。

*9:ルックス・キャラ的な組み合わせに惚れたというのもあるけれども、特殊な相性を発揮して突き抜けた個性のコンビとして認知されつつあった同期二人から取り残されてしまった者同士という側面が私を惹き付けた所はあったかも知れません。

*10:うっすら記憶にあるので「マリみて」の存在は朝ガール板経由で知ったのは確かなはず。

*11:なぜ2003年が百合元年なのかはWikipediaの「百合(ジャンル)」の項目でも見て把握してください。